古代雑記

一億分の一の検証  昭和枯れ芒、素人のつぶやき。

安万呂の道標、その5。

大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山…  『万葉集』、巻第一の二番目に載る舒明天皇の歌です。香具山は、“とりよろう 天”と歌われるように、大和三山の中では特別視されている山です。これについては何らかの理由があるとは思いますが、今回は別の観点から、再度、四つの門の方位図を用いて考えてみることにいたしましょう。
f:id:heiseirokumusai:20151114220629g:plain  先ず、1.図の丸山古墳三輪山を結んだラインに注目してみましょう。前にも述べたことですが、このラインはかなり正確に北東を向いています。下ツ道が丸山古墳前方部から発しているように、このラインもやはり丸山古墳前方部から発しています。香具山はちょうどこのラインの上に位置しています。
 このラインは、既に話していることですが、陰陽の境に位置する鬼門軸の通る特殊なラインです。ここでは霊魂の移動が自由で、三輪山の神即ち香具山の神、香具山の神即ち丸山古墳の神、丸山古墳の神即ち三輪山の神、‥という関係が自然と出来上がります。つまり、祖霊を神と考えるならば、天に住む神が“あもりつく”ことの出来るラインとなるのです。
 また、加えて別の特殊なラインが香具山のすぐ横を通っていることが、さらにこの山を特別視することにも繋がっているのです。その別の特殊なラインというのがこれからの課題、法隆寺から宮滝に向かう天門軸あるいは風門軸とも呼べるラインであります。
f:id:heiseirokumusai:20151114220915p:plain  左図は、既出の五行八方位・四門の図です。これまでは単に軸とかラインとかと述べてきましたが、門につながるのは道です。したがって、ここでは道として話を進めていきます。
 〝すべての道はローマにつながる〟とは西洋のことですが、大和の場合だと“すべての道は香具山につながる“となります。しかも、香具山の道はローマの道とは違い特殊な道です。それは、この道が“土行”の道だからです。
 “土”行は、五行の相克や相生では、その一角を占める一要素にすぎませんが、これを方位図に当てはめた場合、中央という性格を有するようになります。つまり、香具山の道は宇宙の中央、や国の中央を走る、天道とも王道とも呼べる特別な道なのです。したがって、この道を歩くことが出来るのは、宇宙の支配者、国の支配者、つまり神、あるいは神と目される王者のみです。
 記紀の時代の人々が、香具山を2図のAの位置にあると考えていたことは、神武紀や崇神紀で香具山の土を特別視していることからして確かと思われます。つまり、宇宙の中心の大和のそのまた中心に位置する香具山は必然的に、「天降りつく 天の香具山、天降りつく 神の香具山」と歌われる特別な山ということになり、大和の国見をするにふさわしい山ということにもなるのです。

天門と風門のライン。法隆寺から宮滝へ、宮滝から瀧原宮へ、そして瀧原宮から伊勢神宮へ。
f:id:heiseirokumusai:20151114221059g:plain このラインは方位図どおり正確に南東を向いているわけではありませんが、古代人が法隆寺を天門、宮滝を風門としていたことは宮滝のほぼ真東に瀧原宮があることから確かと思われます。
 瀧原宮は元伊勢の一つですが、現在の伊勢神宮の出来る直前にあったと思われる神社です。と申しますのも、文武天皇二年に度会郡に遷した多気大神宮は、この瀧原宮であった可能性があるからです。なぜなら、斎宮瀧原宮はほぼ北東の位置関係にあるからです。北東の位置関係は、先ほど述べた丸山古墳三輪山、そして法隆寺聖武天皇陵とに見られるように古代においては大事なものだったからです。
 古代においても現代においてもそうですが、地形と方位とを都合に合わせて変えることは不可能です。しかし、自然は広くて大きい、ある程度の違いを認めれば、良く似た地形はあるものです。つまり、宮滝から可能な限り真東に位置し、東から西へ流れる川のある開けた場所としては瀧原宮が最適ということなのです。それになにより、宮滝、瀧原宮そして伊勢内宮、これらの地を流れる川はすべて東から西に、しかも良く似た河道を流れているのです。
f:id:heiseirokumusai:20151114221308g:plain  上図は、三つの宮(なお、宮滝は吉野宮と解釈してください)それぞれの川との位置関係を略図で示したものです。四角で囲った河道の形、三者とも良く似ていると思いませんか。しかも、宮の位置は決まって河道の曲がり角です。これを偶然とすることは出来ないでしょう。
 そう、これは偶然ではありません。宮滝を風門とみなせばすべて理解が出来ます。風門は長女でもあります。風門と長女、これは伊勢内宮と同じです。伊勢の枕詞は神風。祭神の天照は長女。伊勢は東にあるように見えますが、実は風門にもあたり、南東にもなります。つまり、伊勢は風門として天門につながっているのです。
 さて、天門に位置するのは太一です。そうなりますと、伊勢内宮の祭神は太陽と太一とういことになります。

 斑鳩東方朔 ≪陰陽の風 05≫