心中天の網島。

　政府与党が掲げる博打法案が成立したと聞きます。さすが、ギャンブラートランプと親交の深い安倍政権。今回は紛れもなく当たり矢ときたようです。そのせいか、葛城山にまで｢当たりー｣と叫ぶ矢場女の甲高い声が聞こえてまいります。

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　博打法案、いわゆるカジノ法案と呼ばれているものです。政府やこの法案の賛同者は、カジノだけではない統合型リゾートを意味するIR法案であることを盛んに強調しているようですが、それならば何もカジノを取り入れなくても好いのではないかと、まあ皮肉の一つも言いたくなるような今日この頃のアベノミクスでございます。

　さてさて、そこで政府お上の言う統合型リゾートというものを私なりに想像してみますと。
　先ず、浮かんでまいりますのが、浅草は浅草寺裏の花の吉原。この花の吉原、スケベ国家の象徴として実に340年の歴史を誇り、江戸幕府よりも長く続いたといわれています。その長い歴史を踏み締めてか、黒山の人だかりの中を外八文字を踏んでしゃなりしゃなりと進む花魁道中、スケベな親爺には垂涎の光景でしょうか。無論、貧乏親爺にもかなう場末の岡場所も当然浮かんでまいります。
　そして場末の岡場所とくれば、次に浮かんでまいりますのが浮世風呂とも呼ばれる湯屋でございます。湯屋(ゆや)は料金を払って入る町場の銭湯で、庶民の気軽な娯楽と社交の場でもございます。
　しかし、スケベが大半を占める国のことでございます。やがて、湯女風呂(ゆなぶろ)、今でいうソープランドの江戸前とでも呼べるものですが、それが大変な勢いで流行りました。わけても神田佐柄木町堀丹後守屋敷前風呂屋、通称丹前風呂は吉原と張り合うほどの勢いだったといわれています。
　さて、その丹前風呂でございますが、実はここにはコスプレの元祖とも呼べる勝山がいたのでございます。なお、余談ではございますが、私役君小角、このコスプレをソープランドのサービスの名前の一つと長い間思っておりました。…

　ん、さてその勝山ですが、彼女は日本髪の発展の元となった勝山髷を考案しています。そして、勝山草履に先ほどのスケベ親爺の垂涎の光景外八文字の花魁道中、これも彼女の考案とされています。そして、これがなければ歌舞伎の石川五右衛門も幡随院長兵衛もなかったろうとされる派手な広袖の綿入れ、いわゆる丹前と呼ばれているもの、これも彼女の考案とされています。
　遊女とはいえ勝山、一世を風靡した名妓でございました。その勝山はさて置いて、次に浮かんでまいりますのが、丹前姿で六方を踏む花道を備えた歌舞伎の芝居小屋。絵島生島の例もあるように、スケベな姥桜には欠かせない芝居小屋。江戸三座の芝居小屋とそれらが率いる芝居茶屋。何々屋と呼ぶ歌舞伎役者の屋号はこの芝居茶屋の屋号とか。
　以上がスケベ国家の施設のあらましかと。そして最後がお待ちかねの賭場(カジノ)とくるのですが、しかし、残念ながら何も思い浮かびません。と言うのも日本では安倍政権以外博打は禁じられていたのでございます。ただ、パチンコ屋の前身とされる的屋(まとや)はございました。
　的屋というのは弓矢を使った射的場を営む者のことで、この射的場を江戸では矢場と呼んでいます。そしてこの矢場に居た遊女が最初に登場した矢場の女なのです。

　役君小角、千数百年を葛城山中に篭っていたとはいえスケベな爺であることに変わりはなく、以上のような想像しか出来なかったのでございますが、政府お上にはどのような想像が働いているのやら。
　聞くところに拠ると、カジノの他に、ホテルにレストランに劇場や映画館はお茶の子さいさい、アミューズメントパークにショッピングモールにスポーツ施設に温浴施設は御負けと言う。御負けついでに展示施設と国際会議場までつけるという。
　思うに、さしずめこの国際会議場ではトランプ以下Ｇ７の面々が集まって、カジノの負け組み尻目にかけてババ抜きゲームかはたまた七並べに興じて贅沢な一時を過ごそうというのでありましょう。

　ところで、この法案には大阪府や大阪維新の会がやたらと乗り気だと。それにしても、大阪はんはこの施設をいったい何処に作るつもりなんやろか、心中天の網島か、それともここは天国釜ヶ崎か、…

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さてさて、因果は回ってきても、つきは回ってはこないルーレット、
財布の底も尽き果てた。
向かうは天の網島釜ヶ崎、
天国に近くはないが門左衛門、松の下枝に帯をかけ、祈った言葉が次のよう。

色即是空　空即是色
　因果は巡る風車　チンチンポイポイ　ポイ捨て
　　要らないのいらないの　飛んでけー

ご愁傷さまでございました。