昭和は遠くなりにけり

古代に思いを馳せ、現在に雑言す。・案山子の落書・

インフレ経済成長。

 昔の話でございます。インフレ経済成長馬券術を信奉し、競馬は最後には儲かると言って全財産を食いつぶした男がいました。

✎.........................................................................................................................................

 株は儲かる。競馬は儲かる。・・は儲かる。
この儲かるという一言、その道のプロと称する人たちが書いた手引書の表題にはたいてい載っているようです。そして、その内容には、やり方次第で儲かるとたいていはしたためてもいるようです。

 思うに儲けと言うか商売の基本は、安く仕入れて高く売ることにあります。つまり仕入れ値と売値の差額が儲けになるという仕組みのことです。
 しかし、安く仕入れても高く売れるというわけではありません。それに、そもそも高く売れる物が安く仕入れられるはずがありません。
 ただ昔ですと、田舎で安く仕入れた野菜や魚介類を都会に運んで高く売るということが可能でした。しかし、今日では田舎で既にその当初から都会向けの商品を生産するという仕組みに変わっていて、田舎で安く商品を仕入れるということが出来なくなっています。そればかりか田舎という地元においてでさへ従来地物と呼ばれていた物の価格が都会とほとんど変わらなくなっているのです。しかも商品はすべて都会へ送られ、地元では品薄の状態だとか。

 これは愚痴ですが、田舎暮らしのメリットがなくなってきています。また、余談かもしれませんが、近年軽自動車の税制が変えられ軽自動車を持つメリットがなくなりかけています。
 思うに、田舎暮らしも軽自動車も、いってみればいわゆるeco生活の三本の矢のうちの二本の矢とも呼べるものです。それが折れかかって破綻を生じています。
 聞けば、都会では車は不必要とか。しかも、都会では交通の便も良く、産直の商品は安く、スーパーの競争が激しく安売りが常時あると言う。これではeco生活の三本の矢は都会にあると言う他はないのかも知れません。それとも、田舎はインフレ、都会はデフレという事なのだろうか。

 アベノミクスとインフレ経済成長政策。
物価を上げ、賃金を上げ、物価を上げ、賃金を上げ、そして物価を上げ、賃金を上げ、そして…
どこまで続ければ良いのか分かりませんが、最後に物価が上がることだけは確かです。また、資本主義の性格からして賃金を上げる以上に物価が上がることもまた確かです。
 最近の有識者の中に、賃金を上げれば景気が良くなるなどといったり、賃金上昇ほどには物価は上がっていないなどと言っている者がいるようですが、先ほど述べたように資本主義では賃金以上に物価が上がるのが基本です。もし上がっていないのだとしたら、それは何処かにしわ寄せが行っている証です。小企業か、それとも発展途上国か、…
 いずれにして、もそうしたしわ寄せは良い形では帰って来ません。

 さて、全財産を失った男の話ですが。彼のインフレ経済成長馬券術というのは倍増しというやり方です。どういう風にするのかというと、配当が倍以上になると言うよりも、その男の言うには、配当が倍以下になることはほとんどなく、またそういった競馬は前もって分かるからそれを外して買えば良いのだと。そして、たとえば馬券を100円買って当たらなければ次はその倍の200円にして買えば良いのだと。
 そこで、これをチョトした表にしてみました。

回数 10 11 ……
投入額 16 32 64 128 256 512 1024
総額 15 31 63 127 255 511 1023
配当額 16 32 64 128 256 512 1024
儲け

 確かに、配当が倍の場合必ず1の儲けがあります。しかし、これをいつまで続ければ良いのだろう。
 これは明らかにネズミ算というもので、数学の笑い話では2倍物語などと呼ばれているものです。
 ところでその男の言うには2,000万以上を注ぎ込んだのだという。上の表だと、投入額の単位を万とした場合、男は11回目で破産した事になる。競馬のレースは一日11回あるというから、あるいは、男は、一日で全てを終えたのかもしれない。
 そして、その男の口癖はといえば、後一回出来れば勝っていた、と。

 インフレ経済成長馬券術、貧乏人には使えない術のようです。いや、金持ちにも無理かもしれません。なぜなら、1レースに投入できる金額は1レースの売り上げの半分以下までだからです。おそらく売り上げの4分の1も買えば配当は下がり、勝っても儲けにはならないでしょう。
 ところで、インフレ経済成長政策。これは、強い国では使える政策術だそうです。しかし、弱い国では使えないのだそうです。それにしても、なぜ強い国で使えて弱い国では使えないのだろう。それは、そもそも強い国という表現は、弱い国へのしわ寄せが出来る事を言い表したものだからです。

・∙∙∙∙∙∙ ♬ ∙∙∙∙∙∙・

鏡の前で、しわを嘆く皆様。しわあせの唄を唄いましょう。

 皆の衆 皆の衆
  どうせこの世は損なもの
   損じゃないかエー 皆の衆 ソン ソン

結構でございました。